JASとPGSは何が違う
JASとは
現在日本には有機農業を支える認証制度として国際有機農業運動連盟(IFOAM)の基準に則って作られたJAS認証制度があります。これは農水省の登録機関のみが認定できるしくみになっていますが、農家への書類作成などの負担が大きいことと、JAS認証を持たない有機農業者が有機野菜とラベルすら貼れない状況となってしまい制度が出来てから15年経つのに有機農家の増大にはつながっていませんでした。現在全耕地面積の0.4%ですが、農水省はおおむね平成30年度までに、我が国の耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を倍増(0.4%→1%)する方針です(農水省HP)。図1にJAS認証の手続きを示しました(徳島県有機農産物認証協会HP)。
図1.JAS認証の手続き
PGSとは
一方、IFOAMにはもっと簡易な参加型の認証制度PGS[Participatory Guarantee Systems]があり、農家の負担を減らせるしくみが取られています。これは、国全体として認証を行うJASとは異なり、地域ごとに消費者、生産者が中心となって農場の調査や認証を行い小規模ながら簡易に有機農業者を増やす仕組みとなっています。このためにはIFORMの正式メンバーになる必要がありますが、下記のようにメールで簡単にできます。
(1) IFOAM (世界有機農業運動連盟)PGSの正式会員となるためのメールのやりとり
図2.IFOAMのPGSメンバー登録をする手続き
(2)オーガニック雫石PGSグループの活動と組織運営
図3.オーガニック雫石PGSグループの活動
オーガニック雫石PGSグループの業務運営
オーガニック雫石 PGS グループには上図に示したように認証基準の設定、標準化と農場調査手順の設定、 主要書類の維持管理、認証承認、オーガニック雫石の LOGO 管理・維持、認証書の発行、渉外の機能があ ります。 オーガニック雫石 PGS グループのメンバーは消費者と生産者から構成されていて、代表 1 名、副代表 1 名が管理業務に当たり、全体の業務運営を遂行しています。
オーガニック雫石PGSグループでのPGS生産者の認証手続き
[1]オーガニック雫石PGSグループでは、毎年一度全メンバーの農場調査を定期的に実施します。
更に、野菜の品質を保つために年間を通じて非定期の農場調査も行います。
[2]したがってオーガニック雫石PGSグループ生産者の認証有効期間は1年です。
[3]図中認証決定までの流れを示す矢印はすべて赤で示しています。新規参入生産車に対する認証手続きも全く同様です。
講習会、研修会、イベント等への参加
オーガニック雫石PGSグループでは生産者、消費者の知識向上のため地域単位で行われる講習会や研修会、イベント等へ参加することを推奨しています。
具体的には岩手県で毎年行われるオーガニックフェスタ、地域の有機生産者の農場巡りとそこでの説明、岩手有機農業研究会が主催する講習会や研修会などです。これらの情報は随時オーガニック雫石のホームページ上に公開されます。以上の業務運営がIFOAM PGSから認められればオーガニック雫石は正式なIFOAM PGSとして認証されます。この業務運営の評価は1年ほどかかると言われております。
PGSの世界的動向
現在IFOAMに正式認定(IFOAM Recognized PGS Initiatives)されているPGS を取得している國はフランス、ナミビア、ニュージーランド、ニューカレドニア、米国、フィリッピン、ヴェトナム、スリランカ、日本(オーガニック雫石)、フランス領ポリネシアの10か国です(2022年4月現在)。
世界でPGSを実施している国は80か国、200ほどの取り組みグループがあります(地域で認証システムを実施している国や現在PGSを目指してしているいわゆるIFOAM非認証のグループなどすべて含めて)。従って今後ともIFOAMに正式認定されるPGS取り組みグループは増加していくと思われます。
PGSによって、有機農法や自然農法で栽培していることが認められ、他の農業者との栽培法に関する情報交換や、消費者からの生産物や農場に対する意見をもらえるようになります。更に毎年行われる農場訪問と栽培基準の調査は生産者・消費者の両者に対して大きなメリットとなります。安心・安全の農産物を消費者へ届けること、有機農産物の生産者を増やすためにもPGSの導入は日本でも是非必要です。現在は連合PGS打ち合わせ会が2021年8月から2か月に一度開催されており、皆さんIFOAM Recognized PGS Initiatives取得の勉強会が開催されています。
2022年3月にはオーガニック雫石はPGSの冊子を作成しましたので参考にして頂ければと思います。
JASとPGSは何が違う?
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JAS | PGS | |
有機農家としての認定機関 |
農林水産大臣に登録された第三者機関である「登録認定機関」 |
IFOAM PGS正式会員の地域PGSグループ オーガニック雫石がこれにあたる |
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認定を受ける対象 | 農家単位 |
PGSグループ単位(複数の農家が含まれる) |
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有機農産物規格 |
有機農産物の日本農林規格 |
同左 | |
費用 (初年度) |
入会金 | 50,000円 | 80ユーロ(約11,000円) |
年会費 | 120,000円 |
100ユーロ(約13,000円) 1月1日から正式会員となり前年度の売り上げがPGS全体で50,000ユーロ以下の場合 |
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認定申請費 | 20,000円 | 0ユーロ | |
検査日当 | 25,000円 | 実費 | |
検査委報告書作成費 | 5,000円 | TBD | |
検査旅費 | 実費 | 実費 | |
運営協力費 | 売り上げの0.5%~0.1% | なし(年会費に含まれる) | |
講習会受講費 | 実費 | 実費 | |
費用 (2年目以降) |
年会費 |
120,000円 | 前年度の売り上げで決まる |
認定申請費 |
20,000円 | 0ユーロ | |
検査日当 |
25,000円 | 実費 | |
検査委報告書作成費 |
5,000円 | TBD | |
検査旅費 |
実費 | 実費 | |
運営協力費 |
売り上げの0.5%~0.1% |
なし(年会費に含まれる) |
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講習会受講費 |
実費 | 実費 | |
通信費 | TBD | TBD |
PGSの売り上げ高とIFOAM年会費の関係
売上高 | 年会費 |
<50,000ユーロ | 100ユーロ |
<200,000ユーロ | 300ユーロ |
<800,000ユーロ | 1,000ユーロ |
<2,000,000ユーロ | 2,000ユーロ |
<5,000,000ユーロ | 3,000ユーロ |
>5,000,000ユーロ | 4,000ユーロ |
<関連資料>
IFOAM MEMBERSHIP APPLICATION FOAM
PGS GUIDELINES How Participatory Guarantee Systems can develop and function
Organic 3.0 Consultation Document
Organic 3.0 Discussion Document
IFOAM MEMBERSHIP DIRECTORY 2016